いくら着飾ろうと江戸中の男たちに愛されようと、しょせん遊女は商売道具でしかなかった。
休みもほとんどなく、食事も粗末なものが出るだけ。
いいものを食べたければ、懸命に働いて客からお捻りをもらいそのお金で自前の食べ物を買ったり、見世にあげた客に台の物をとらせご相伴にあずかるしかない。
さらに、着飾る着物、帯、化粧品に至るまで、全て自分で買い整えねばならない。
大名や大商人が贔屓にしてくれる遊女はほんの一握りで、ほとんどの遊女が手練手管を労して客からお金を吸い上げることに精を出した。
は僅か十九にして江戸一にまでに上り詰めた一端の遊女である。
うかつなことに、
俺はその遊女を愛してしまった。
「」
「晋助さん、またいらっしゃったの?」
は京弁をあまり好まないようで、至って一般的なまかないを好んだ。
誰に対しても同じように綻んだ笑顔を見せるが一層淡く見えた。
まだ日の出まで随分と時間があって、かといって日が落ちてからまだ時間が浅いともいえない空色をした景色を見て俺は言った。
「逃げよう。」
俺の目を真っ直ぐに見る彼女に偽りの色はこれっぽっちも見えなかった。
幸せな君を只願うことも
(...Title&LastWords By SHENARINGO)
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