「この文に適した慣用句は?」
開け放した窓から風が踊り入ってくる。
それに誘われて年月のせいで少し黄ばんだカーテンが揺れる。
「んー春の匂い。」
「話逸らすなよ!」
テスト期間中で部活は休み。
ざわめきや騒ぎ声といった雑音も聞こえず、まるで二人だけ。
クールな二枚目土方君と勉強会なんて今のあたしじゃ信じられない程奇跡に近い事だ。
「で、答えは?」
「えーっと、・・『手に取るように』かな?」
「おー合ってる合ってる。」
ガッテム!土方君の質問なら答えられないものはないのよ!
「・・・は?」
しまった!うっかり心の内を白状してしまった!
落ち着くのよ、あんたならやれる!
「いやほら、3年間クラス同じだし、色々とね!」
上手くフォロー出来たかな?
あたしは知らず知らずのうちに胸のスカーフを両手で力強くぎゅっと握りしめていた。
そしたら土方君はその手をそっと解くと自分の唇に持っていって、それからあたしの指先にちゅっとわざとらしく音を立ててキスしてから「じゃあに質問。」と言った。
その時あたしはもう気絶寸前で、キザな土方君に赤信号状態だった。
締めくくりは土方君の喉から出た音声。
「俺のこと好き?」
吐く息が熱くなってゆく
(...LastWords By SHENARINGO)
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