卒業式も終わった、大学にも受かった。
だったら恋だって!
と、期待を胸にあの校舎の前に は戻って来ていた。
「もう先生と生徒じゃないもん、」
意を決して校舎に足を踏み入れる。
思いの外校内はふんわりとした空気で少しも変わっていない様だった。
そりゃあ卒業したのはつい3、4日前だけど、やっぱりこう、切なさがあるじゃん、
と考えていると家路に向かう後輩とすれ違い、
「あ!先輩、大学合格したんですか?」などと黄色い声で叫ばれる羽目になってどさくさに紛れてそくささとその場を後にした。
あの青春時代(だからそんなに年月は経っていないって!)の様にいつもの階段を駆け上って廊下の一番奥の教室、
『3-Z』のプレートが掲げられた教室のドアの前に立つ。
2度3度深呼吸をしてガラッと勢いよくドアを開けて、そのまま前を見ずに勢いよくドアを閉めた。
「はい、ドアの開け閉めは優しくしましょうね、ちゃん、」
の背中の方から聞こえてきた声にはどうにも聞き覚えがあった。
「その癖、直さないと駄目だって言ったっしょ?大学落ちたの?」
「ぎん・・ぱちせんせい?」
振り返ることも出来ぬままその聞き慣れた名前を問いかける。
「もう先生じゃない、」
ああ、そうだった。もう銀八で良いんだ、ぎんぱち!
ぎんぱっつぁん!
腹の中から笑いが込み上げて来て思わず泪ぐんでしまう。
「あーやっぱ、落ちたんだ、悪ィな、俺がもっとしつこく注意しとけば良かったのになー」
と、全く話は噛み合っていないのだがそれがなんだか嬉しく想えるのは気のせいではなさそうで、
「先生のばっかー!受かったもんね!」
「なっ・・!俺を騙したなコノヤロー!そして俺はもう の先生じゃないんだぞ!」
「ふーん、で?」
一瞬ぽかんとした銀八だったが何となく理解出来たように「ああ、」と言ってみせた。
「今日は白い日だったな、」
わざわざ日本語にしなくても、とツッコミたくなったのだが期待の方が大きかったようで、「そうだね、」とドキドキしながら答えた。
「俺んとこ来るか?」
本当、この人はつくづく判りやすい人だなあと、
思ったその日に決めました。

白い日の御誓文 第一条
「特別な日にはもっと気の利いた事を言う!」



































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